月別アーカイブ: 2025年10月

ノーベル賞から見る薬と医療の未来

今年もノーベル賞の発表の時期になりました。今年は日本人が2分野で受賞され、とてもおめでたいニュースです。

過去には、抗寄生虫薬の開発や免疫チェックポイントの発見など、ノーベル賞に関連する研究が新しい薬の発見につながってきました。

今年の生理学・医学賞では、「制御性T細胞(Treg)」の研究が評価されました。すでに使われている薬の中にも、間接的にこのT細胞に働きかけ、補助的な効果をもたらすものがあります。今後は、Tregをメインターゲットとした新しい薬の登場が期待されており、治療の幅がさらに広がりそうです。

化学賞では「多孔性有機金属錯体(MOF)」が受賞しました。MOFは物質を選んで吸着する性質を持つ多孔性材料で、薬への応用も期待されています。たとえば、従来の吸着薬やドラッグデリバリー(DDS)システムの補助として利用される可能性があります。MOFを応用することで、薬を体内でゆっくり放出したり、特定の物質を効率よく捕まえたりする仕組みをより柔軟に設計できると考えられています。今後研究がさらに進めば、こうした応用が現実の薬に反映される日も期待できそうです。

また、物理学賞では「巨視的量子トンネル効果」の発見が評価されました。この量子現象自体が直接薬に作用するわけではありませんが、量子コンピューターへの応用が進められています。新薬候補の探索など膨大な計算が必要な場面で、将来的に役立つ可能性があります。

過去から現在、そして未来の医療や薬の発展に、ノーベル賞の研究がさまざまな形で関わっていることを感じます。これからもノーベル賞には目が離せません。